爪と犬
明日も多嘉良は、家で仕事…。
良きような、大変なような。
何しろ、家にいたらいたで
お茶が飲みたければ、私がゴロゴロネコネコ
していても、起こしてくるのだった。
要は、構ってくれ!ってこと。
連日の猛暑。
ひたすら家にいる。寝ているだけ。
あっという間に朝。
そして、夜。
朝と夜に、秋の匂いを とらえて
くんくん空気を吸い込んでみる。
秋の匂いは、せつない。
その切なさが、好き。
爪磨きをして、
オーガニックのオイルで爪を強化。
爪を、こうやって見る人はMで
指を伸ばして見る人は、S
と言うけれど(私はS派)。
皆様、どっち?
まあ、女性ならでは、だね。
このオイルの後に、薄く
ベースコート塗れば良いんだけど、
ここ数日は塗ってない。
いきなり体調が良くなく、肌荒れがひどくて
免疫落ってる感が…
基本的には、寝ていたい。
爪磨きは、中学生の時にはマニキュア禁止だったし、
高校入ってからは校則無視すれば塗れたけど、
バイトがレストランだったので
ひたすら磨くだけにしていた。
姉のメイク道具から、
引っ張り出して使っていた。
一応、私は中学時代も働いていたので
(多嘉良に会う前、中1の頃。親に非合法な
仕事⇦テレクラのバイトを強要されてた時)
その内、親に巻き上げられなかった
いくらかのお金で、ひっそり爪磨きセットを
ドラッグストアで買った。
その爪磨きセットのキャッチコピーが綺麗で、
『あなたの爪は桜貝』と、あった。
なんて素敵。
なんて文学的。
(この商品、覚えてる人がいらっしゃるかも)
少年多嘉良は、そんなの知らなかったのに
私の爪を見て、
見るだけではなくて
パクッとして「桜の花びら」
と言ったことがあった。
なんじゃこいつ!
ドッキン。
ドキドキ。
ドキドキ。
と、思った。
ふ…
なんてかわいい時代なのかしら。
今じゃ、
「なんだよ、眠いんだよ。やめれ。この犬が‼︎」
つって、寝てしまう。
これぞ、オバチャン化。
いやー、楽だわ。歳取るって、幸せだ。
夜中、指輪を磨いた。
多嘉良の結婚指輪も。
磨き化け猫。
窓も磨く。
多嘉良の眼鏡も。靴も。
何でも、何もかも磨く。